インドで女の子誕生を祝福し森を育てる”111本の木”

女の子の誕生は歓迎されない村

私は、週末に図書館に立ち寄り新刊を何冊も借りました。子供用の読書室に偶然入るとおすすめ図書の陳列があるので何気なく、手に取った本がインド出身のリナ・シンが著した「111本の木」です。内容は、衝撃的であり心が打たれました。ここで描かれているピプラントリ村村長のスンダルさんという男性の行動に敬意の念を禁じ得ません。インドの社会的、文化的につくられた男女の差、女の子に誕生を喜ぶことができない悲しい慣習と現実がありました。

この本の素晴らしさは、このジェンダー課題を評論するのではなく、ドキュメンタリーとして、村長のスンダルさんが取った勇気ある一つひとつの具体的行動が、子供たちにもわかりやすく描かれており、成果まで表現されていることです。また、ジェンダー課題のみならず、自然破壊に抗い、村人と協力して木を植えることで自然保全にも、また新しい事業を村人が行うことで女性を含む村人の経済的自立まで促すという筋の通ったリーダーシップが描かれています。

植林・貯金・女性の児童婚に待った!

「111本の木」は、インドのある村の実話を紹介する力強い作品です。ジェンダーや自然破壊の課題は、インドに限った課題ではないことは、自明です。アフガニスタンを含めイスラム圏の一部の地域では、児童婚や教育機会の制限など女性を抑圧する文化的な慣習を持つ国があります。日本でも、OECD諸国の中では、男女の賃金格差や職場での管理職に占める割合、女性国会議員数の割合など驚くほど女性の位置づけが後進的です。男性が「主」で女性が「従」という家父長制の考え方が根深く浸透しています。

やり抜くリーダーシップ

世界の他の地域でも、日本でも画期的な施策を打ちだし、やりぬくリーダーシップが求められています。国を問わず、各々の地域が「スンダル村長」を発掘、育て、具体的な施策をやり抜くようにしてはどうか。この子供向けの絵本は、魅力的なメッセージを発信しています。

 

生活者の視点 コロナ禍と高齢者

80歳になろうとする一人暮らしの叔父は、コロナ禍中に外出が制限され、こどもたちも感染防止のため会いに来ることを控えたため、口数も減り、身体能力機能はあるのに何をするにも意欲がなくなってしまいました。服も着替えることや入浴も自分からはする意欲がないというのです。久しぶりに会って、兄弟姉妹が幼かった頃の思いがけないエピソードや現役時代のスイス旅行の話をすることで新しい発見がありました。コロナ禍は、高齢者の命を守るために人との接触を制限するように働きかけがありましたが、一方で、高齢者にとってかけがいのない他者との交流機会を奪ったことも事実です。私は、コロナ禍が収束に向かう中、在宅介護や施設介護、そして行政の高齢者への支援をする部局など関係者が施策を打つときが来たと感じます。地域社会のあらゆるマンパワー、ソーシャルキャピタルを総動員して、周囲の高齢者とまずは積極的に「会話」しましょう。自分の叔父がそうであったように、高齢者との会話から若輩者が得ることがあります。あなたの近所にもいらっしゃるはずです。